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今月の税務・経営トピックス
2003年10月1日更新


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税務・会計
 欠損金の繰り戻しによる還付請求   

   通常、法人税の計算において欠損が生じた場合、青色決算書を提出する法人は欠損金を繰り越すことになります。この欠損金は、欠損の生じた年の翌年以降5年間にわたり繰り越すことができ、その後に所得が生じた場合は強制的に相殺され、相殺できなかった欠損金は打ち切られます(以下、5年間の繰越控除と呼ぶことにします。)。
 実は、上記のような欠損金を5年間の繰越控除ではなく、前期に生じた法人税額のうち一定額を還付請求することにつかえるのです。つまり、当期に生じた欠損を当期に使うということであり、翌期以降に使うのではないということです。しかし、残念ながら現在は一定の事由が生じた場合のみの適用となっており、通常は5年間の繰越控除を適用することになります。
 その一定の事由とは、青色申告をしている法人が解散、営業の全部の譲渡、民事再生法等の適用など翌期以降に5年間の繰越控除の適用が受けられる見込みがほとんどない場合と、通常第2期から第6期までの中小企業者(実際は、もうすこし細かな条件があります)に該当する場合をいいます。
 では例を使って、実際にいくら還付請求できるのかということを見ていきます。この前提として、前期は法人税を納めていたが、当期は上記の一定の事由に該当し欠損が生じていることが必要です。その前提で、以下の金額を使って具体的に計算していきます。
 まず、前期の申告において、課税所得金額は5,000万円、納付税額は1,500万円とします。(ただし、控除所得税や留保金課税は生じないとします。)  そして、当期は欠損金が3,000万円生じているとします。
 この場合の還付請求額は、

  前期の納税額 × 当期の欠損金額 ÷ 前期の課税所得金額 
    1,500万円      3,000万円         5,000万円
  =還付請求額
    900万円

 となります。
 この様な状況に該当する場合は、5年間の繰越控除ではなく欠損金の繰り戻しによる還付請求ができるかもしれませんので、税理士にご相談ください。

法 律
 自己株式が取得できるようになりました 

 商法の改正により株式会社は自己株式を取得することができるようになっております。この自己株式とは、自社が発行する株式を自社が所有している場合のそれをいい、この自己株式は一度取得してしまうとずっと金庫にしまっていてもよいという意味から金庫株などとよばれています。
(1)改正前の自己株の取得
 以前は自己株式を取得することは原則禁止であり、合併や株式償却など限られた場合にのみ取得が許され、それにより取得しても遅滞なくまたは相当の時期に処分しなければなりませんでした。その理由は、商法では債権者保護を目的としており重要視している資本を実質的に払い戻すことにより会社財産がなくなり債権者を保護できなくなるとの考えや、特定の株主から株式を買い戻すと株主間に不公平が生じる、経営者の支配力を強める、インサイダー取引の可能性などの問題があるためでした。また、取得できる金額は、配当できる金額の範囲内としており、利益処分と同様の考えをとっておりました。

(2)改正による問題点への対応
 自己株式の取得を解禁するにあたり、商法上の問題点への対応を次のようにしました。  資本の払い戻しであるとの問題への対応は、自己株式を取得する財源は原則として配当可能利益の範囲内とすることとしました。つまり、従来の限度額をおおむねひきついだことになります。
 株主間の不公平への対応は、公開会社は公開買付けを基本とし、特定の株主からの買付けの場合は他の株主にも買い取請求権を与えることにし、閉鎖会社においては株主総会の特別決議を必要とすることにより対応しました。逆にいうと、取得の目的は問わないが、その後の処分はなかなかしずらくなったともいえます。
 経営者の支配を強めてしまうとの問題への対応は、取得した自己株式はその処分に恣意性を排除するため新株発行手続きに準拠し、特定の者へ有利な価額で譲渡するには株主総会の特別決議を必要とすることにより対応しました。
 インサイダー取引には、証券取引法の規制強化により対応しました。

(3)自己株の利用法
 自己株式は、特に中小企業においては、財務体質の改善や資本効率の向上に役立てることができます。また、取得した自己株式をストックオプションに利用、株価下落への対応、事業承継に活用するなどの利用が考えられます。(ストックオプションの課税関係については、バックナンバーをご覧ください。)

(4)自己株式の取得手続き
 会社が自己株式を取得するには、別段の定めをのぞき、定時株主総会の普通決議で一定の事項をきめることになります。
 別段の定めとは、株主から買取を請求された場合や譲渡制限会社が第三者への株の譲渡を防ぐために自社で買取る場合や会社が保有する親会社株を親会社が買取る場合です。つまり強制的に決まっているものや別に厳しい基準がある場合です。
 そのため、市場において自己株を買取る場合は定時株主総会の普通決議により一年間に買取る株式の種類、総数、取得価額の総数を決議します。この株主総会の普通決議を受けるということは利益処分と考えているためです。
 ただし、特定の株主からの買取については、定時株主総会の特別決議を必要とします。 つまり、株主間での差別がないようにするためであり、他の株主も自分も買取ってほしい場合はその旨を主張できるのです。

人事・労務
傷病手当金 

 傷病手当金は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、病気やけがのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。

 支給を受けるための4つの条件
   @病気怪我で療養中であること
  A労務不能(被保険者の現在の仕事が出来ない状態)であること
  B連続して3日間の待機のあと4日間以上休んでいること
  (その4日目からが支給の対象となり、最初の3日間を待機期間
   といいます)
  C給料を受けられないこと(給料をもらっていても、傷病手当金の
   額よりも少ないときは、その差額が支給されます。)

  病気中に会社を辞めて、その後も継続して傷病手当金の支給を受ける場合の条件
  @被保険者であった期間が資格を喪失した日(退職日の翌日)の前日までで、継続して一年以上であること
  A資格喪失日前に連続した3日間の待機期間があること
  B少なくとも1日は傷病手当金を現実に受けているか、受けうる状態(傷病手当金を請求すれば支給を受けられる状態)にあること

     なお、傷病手当金の支給の申請時の注意点には、次のようなものがありあます。
  @療養のため労務に服せない状態には、診療を受けずに自宅で療養をしている期間も含みます
  A会社を辞めた場合、在職中の待機期間が2日では傷病手当金はでません。
  B労務不能により退社した日は初日に数えられ、就業時間終了後に労務不能となった場合はその翌日から起算されます。
  C退職後に新しく発生した病気ケガはについては傷病手当金の対象にはならず、あくまでも在職中に発生した病気やケガが対象となります。

 傷病手当金日額について
  傷病手当金は1日について、標準報酬日額(毎年4.5.6月の給料で算出される.標準報酬月額を30で割ったもの)の6割となります。 そのため、報酬月額は実際の給与とは一致しませんのでご注意ください。
  また、会社からその間に報酬がでると、その分減額されます。

   受給できる期間
  最高で1年6ケ月受給できます。 また、退職した場合でも退職前に病気で4日以上継続して休んでいれば同様に受給できます。
  ただし、退職までに健康保険に1年以上加入していること、又は任意継続していることが条件です。   ちなみに、被保険者期間が資格を喪失した日(退職日の翌日)の前日時点で継続して一年以内の場合は、退職すれば傷病手当金の受給資格を失うことになります。(加入期間が1年に満たない場合は、保険の喪失と同時に打ち切られるということです。)

 手続きの方法
 「傷病手当金申請書」に事業主の証明および医師の意見を書いてもらい、会社の管轄となる社会保険事務所に提出します。

参考:この制度の根拠となる健康保険法の条文は、以下のようになります。 第45条(傷病手当金) 被保険者が療養の為労務に服すること能わざるときは、その日より起算し第4日より労務に服すること能わざりし期間傷病手当金として1日に付き標準報酬日額の100分の60に相当する金額を支給す。 第47条 支給期間は同一の疾病又は負傷及び之に因り発したる疾病に関してはその支給を始めたる日より起算して1年6月を以って限度とす。

経 営
 経営の成熟度の評価 

 経営は社会システムである。その社会システムの特徴は、自分の意志で新たな性質を開発し、自己を変革させる能力を持つことにある。
 その社会システムとしての経営組織の成熟度が高い組織ほど、自分の意志で新たな性質を開発し、自己を変革させる能力が高いといえる。
 ゆえに、経営組織の現状の成熟度を測定し、成熟度レベルを高めることが重要である。
 そこで、経営組織の成熟度を、レベルに分けて評価する尺度として次に示す成熟度モデルが使用される。

  1.マルコム・ボルドリッヂ賞
  2.クロスビーの成熟度モデル
  3.CMM (Capability Maturity Model)
  4.日本経営品質賞  等

 日本経営品質賞は、経営を行う上での理念を4項目示している。
  1.顧客本位
   企業の保有する経営資源を活用して最大の満足を感じる
   顧客が評価する価値を提供する。

  2.独自能力
   他社とは質の異なる差別化された価値を提供するための能力を
   持つこと

  3.社員重視
   社員一人一人の尊厳を守り、独創性と知識創造を高めることが
   必要である。

  4.社会との調和
   企業も社会を構成する一員であるので、自己中心的であった
   り、倫理性を失ったり、環境対策が十分でなかったりする事
   等のないようにしなければならない。

 また、日本経営品質賞は、前述した理念に基づく「基本的な考え方」として11項目の経営上の重要な関心事を構成している。

  1.クオリティ
  2.リーダーシップ
  3.プロセス
  4.「知」の創造と活用
  5.時間とスピード
  6.パートナーシップ
  7.「環境保全」
  8.「事実に基づく経営」
  9.「グローバリゼイション」
  10.「フェアネス」
  11.「イノベーション」

結 論

 経営の成熟度の評価(例えば「日本経営品質賞」)を通じて、経営組織は現状把握を実施し、その後、評価されたレベルより上位のレベルの目標設定をし、そして実現を通じて、経営品質向上のための改善、革新を継続的に行なわなければ、激しい生き残りのための競争に勝利することは出来ない。

 I T
 ITに関連した略語 

 今回は、ITに関連して最近特によく目にする、略語について少数ですが、記述致しますので、参考にしてください。

ASP(Application Service Provider)
 インターネットを通じて業務システムサービスを提供する事業者

ERP(Enterprise Resource Planning)
 企業の重要な経営資源の人、物、金を全体最適に配分する経営手法

SCM(Supply Chain Management)
 企業活動における資材調達から生産・物流・販売までの全体最適を実現する仕組み。

TCO(Total Cost of Ownership)
 情報システムを導入・維持するのにかかる総費用。ハードの直接費用だけでなく、利用者の時間の浪費までも加味して算定する。

EDLP(Every Day Low Price)
 米ウォルマート・ストアーズが始めた戦略で、店舗にある商品全てが、いつでも安く入手できること。

XBRL(Extensible Business ReportingLanguage)
 企業の財務データなどの記述言語。企業の信用リスク情報の蓄積や金融機関による利用がしやすくなる。

BPO(Business Process Outsourcing)
 システムの開発運用だけでなく、業務(営業、人事、経理、総務等)分野まで外部企業に委託することで、経営資源の集中・効率を図る。

CMS(Cash Management System)
 企業の複数の部署の行う振込みや、保有する銀行口座を一元管理し、コストの削減を図る。

CIO(Chief Information Officer)
 情報処理担当役員。企業の戦略を情報システムに反映する役割を担う役員。
  参考 CEO(最高経営責任者)・CFO(最高財務責任者)・
       CSO(最高戦略責任者)

KPI(Key Performance Indicator)
 重要業績指標。業務やプロセスを定量的に管理するための尺度。

KGI(Key Goal Indicator)
 経営の主要成果目標と目標を評価する為の評価基準。企業のビジョンや戦略により策定された施策が達成すべきゴールである。

BPR(Business Process Re−engineering)
   企業の経営体質変革のための方法論であり、体質改善や企業風土改革につなげるマネジメント手法。

CSF(Critical Success Factor)
 重要(主要)成功要因。これら要件の達成により、結果として競争の優位性が確保できる。

EVMS(Earned Value Management System)
 プロジェクトの進捗状況を測定する手法。予算数値と実績数値を比較して、コストとスケジュールの進捗状況が、計画通りかの測定をし、完成時のコストの予測をする。

RFP(Request For Proposal)
 提案書提出の要求のこと。情報システム構築のため、必要な要件を明確にし、その要件を満足させる為のIT資源調達をベンダーに提案依頼をすること。

*このホームページの記載内容につきましては、あくまで標準的なものを想定して記述しております。個別ケースによっては、必ずしも前提となる条件が一致しないため、結論が変わってくることも予測されますのでご留意下さい。また、意見の部分は私見ですので、予めご了承くださるようお願いいたします。


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